贄姫と忌み子

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「春日の家は代々優れた人物を輩出しておりますし、他の財閥に引けを取らないだけの富と財力を得てきた。 ………………勿論、美貌も。 それだけのものを何百年も与え続けるということは、対になる鬼の家が神通力や財力を甚大に有しているという事に他なりません。 年頃を迎えた鬼が精力を得るために贄を寄越せというなら、従わねばならないでしょうね」 「…………」 「今の春日家になる前の対(つい)の家は、贄を拒んだために次々災禍に見舞われ没落して消えたと書かれております。 子を惜しんで身代(しんだい)を潰すか、素直に従い子を差し出すか………………。 残された日は多くはありません。 どうか、よくよくお考えください」 「「……………………」」 富も材も人にも美貌にも恵まれ続けることが、自分たちには普通の事だと思っていた。 恵みを受けるのは当然。 咲耶と咲良が生まれた後、次々子宝にも恵まれたのも。 だが。 贄を出すのは嫌だ。 ……それは、ただの身勝手ではないかと言外に言われた気がして、両親は口を閉じるしかない。
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