第1章

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肩ごしに旅客機が大きな腹を見せて飛び立って行く。いや、降り立つところなのか。車中の窓から見えた姿は大きくて、見る者が見たら一種の感動と驚きに満ちているのかも知れない。あちらからすれば、ちょっとした旅行気分のつもりなのだろうが、こちらにしてみれば単なる里帰りである。つまりお互い何も知らなかったという事実が露見した訳で。そろそろ午前中の講義が終了する時分だろうか。落としたくない単位のものが一つあったのだが、今更どうにもならない。溢れる勢いの想いを抱えた准教授に拉致され、その運転で高速道路にのって、田舎という名の地元まで連れて来られた挙げ句に、まさかの車中。真昼の月が青空に浮かんでいる。この場所は数年前まで日常風景だった。子どもの頃はなかった展望台に人気はなく、駐車場に、乗ってきた黒い車以外には目につく青い車が1台だけ。既視感とふいの目眩に、覆い被さっていた准教を押し退けて、何か喚いているのを黙殺した。それからドアを開けて、助手席から転がり降りる。地元から出て大人になったつもりでいたけれど、やっていることは子どもの頃と同じじゃないか。どこにでも行けて、何でもできると思っていたのに。只流されて、言いなりになって、巨大な飛行物体と現実味のない月を見上げているだけ。下の名を呼ばれた気がして、振り向く。声の主を探すと、少し離れた場所にとまっている青い車の脇に、高校卒業で別れたきりの同窓生が立っていた。最低最悪出来すぎの邂逅だ。彼の、驚いた顔をしているけれども変わらない飄々とした様子に、笑うしかなかった。
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