【一】一夜の恋

9/12
7618人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「椿さん、よくご存知ですね。まるで社長のお宅に行ったことがあるみたい」 「それは…」 「副社長と社長が椿さんを取り合ってるって噂、本当だったみたいですね」 「誰がそんなことを…!?副社長にはちゃんとお断りしました」 「すみません。噂なんてウソです。そんな気がしたから」 木葉君の誘導尋問に簡単に引っ掛かるなんて、どこまでバカなんだろう。 「木葉君、私を試すなんて狡い」 「本当にすみません。副社長には断ったということは、社長と…。本当に?」 「違うの。偶然なんだけど、私の友達が社長のメイドをしていて。友達から色々聞いてるの。社長が私みたいな女子社員と付き合うわけないでしょう」 「椿さんはウソが下手ですね。社長がお相手なら、もう敵わないな」 木葉君は少し寂しそうに笑った。 「勘違いしないで」 否定したけど、木葉君には全て見抜かれている気がした。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!