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「……待ってた?」
唐突に聞かれた質問。
赤いジャケットの上に白いコートを身に纏い、紺色のマフラーを巻いているルパン三世が尋ねる。
どの季節でも派手さは変わりないのか、その場の空気から浮いているようには見えないが、普段着ることのない白を着ているのを見るとやっぱり派手に見えていた。
「……待ってねぇ」
「待ってたんだろ。グフフフ」
フンッとそっぽを向き、拗ねているのだがルパンには関係がないのかニヤニヤしながらポケットに手を突っ込み、ガサゴソと何かを探せば煙草とライターを取り出した。
「1本吸おうぜ」
『ジタン』。そう書かれた煙草を1本取り、ルパンは前に差し出す。
自然に煙草を取った手に挟まれている煙草に火を付け、自分が持っている煙草に火をつける。
「待ってねぇって言ってんだろ」
ふぅ、と白い煙が真っ暗な空に溶け込んでは消えていくのをルパンは見つめながら、放たれた言葉に肩を竦める。
どう考えても肩や頭に雪を積もらして、鼻を寒さで赤く染めている所を見ると、『待っていた』と思われるだろう。
この寒い時期に長時間外に居たというのなら、脚や手が凍傷になるだろうがと怒鳴ってやりたいものなのだが、ルパンが遅刻をしたため、怒鳴るに怒鳴れない。
元々今日下見の予定で、待ち合わせの時間に遅れる事も無く、余裕があったのだが、よりにもよってあの銭形が居たのだ。
それからは常に追いかけられて撒いてを繰り返し、やっと撒けたと思った頃にはもう待ち合わせの時間から3時間も越えていた。
居ない、と思いながらも電話を掛け、留守電を残し、待ち合わせの場所にやって来くればそこに見慣れた姿が目に入り、近寄って声を掛けたら待ってないと返ってきた。
「とっつあんが追いかけて来てよ、中々撒くことが出来なくてだな」
「待ってねぇって言ってんだろ」
認めたくないのか、一向に「待ってた」と言わない事にどうしても「待ってた」と言わせたくなったルパンは、言い訳などどうでも良いことにして、口角を上げてこう言った。
「待ってたって、素直に言えばお前さんの望む褒美をプレゼントしてやるぜ」
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