第1章

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「こりゃまたぁ、ガキがこんな遊びをするとはねぇ」  聞き覚えのある声を聞いて目を開ける。  地面の位置から見えるのは靴だけで、どうやら2人居るようで、1人前に居る人がしゃがむのが分かった。  そしてその顔に見覚えがあり、「ルパン、三世……」と口にした。  会う事はない、そう決め付けていたのだから嬉しさもあるのだろう。 必死に俯いて涙を見せないようにしていたのだけれど、地面にいくつもの染みを見て泣いているのだと、ルパンとその後ろにいる次元は気付くが、突っ込みなどはしない。 「久しぶりだなぁ。元気にしってっか? っていう質問はあとだ」  おちゃらけた口調から少し声のトーンが低くなり、「ガキがガキを殴ってる画には興味ねぇけどよ、『相棒』に怪我負わせれちゃ洒落になんねぇから仕返しはさせてもらうぜ」と、有無も言わせず、ルパンは腕を一番図体のでかい子供に伸ばし、ドンッと前に押した。  子供は大人の力に敵うはずもなく、そのまま尻餅をつき、残り4人が睨みつけたり怒鳴ったりするも、次元の鋭い眼差しには負けるので、泣きながらその場を去っていった。 「大丈夫か?」  ルパンが恋也に問う。 恋也は頷くも5人全員に殴られたりしているので、到底大丈夫だと言える訳もなく、ルパンが恋也を背負い、アジトにしている家に連れて帰る。  幼稚園の頃親を亡くした恋也は親戚の家に預けられており、心配をかけるというので帰ろうとしたのだが、ルパンがその怪我のまま帰宅をすれば余計心配するだろうと言い、友達の家に泊まる、という口実を作った。  **  それから何週間目の事。 ルパンと恋也の関係は特に変わりはなく、子供と大人、という線が引かれている。  ならなぜあの時「相棒」と呼んだのか、それはルパンにしか分からない。 「え……?」  ふと、ルパンのアジトの前でルパンに言われた事に頭がついていかない。 『俺達はもう居なくなる』と、ルパンの口からそう言われた。  恋也がルパンが裏稼業をしていることに気付き、口には出さなかったが、ひそかに憧れを持ち始めた。  自分もその場に入る事が出来るのだろうか、何か約に立てるのだろうか、そう思いつつも、まだ小学生の身、誰も中に入れようとは思わないだろう。  だったらもう少し大人になってから仲間に入りたいと宣言しても良いだろう、と思っていた。
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