第1章

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 服装は変わっているものの、帽子に髭面、猿顔にがに股は変わっておらず、自然と近付いているのが伝わり、次第に歩くペースを上げ、ぱたりと足を止める。 「わりぃな」    どうやら男は歩いていた道を塞がれたのだと思ったのだろう、すぐに体を逸らしてそのまま通り過ぎて行こうとしているのだけれど、今ここで何もしなければもう会う事はないだろうと判断し、そのまま腕を伸ばして、赤いジャケットを掴む。 「……ルパン」  そう口にして男の体を引き寄せて人の目など気にする事は無く、そのまま抱きつき、そして「会いたかった」と、男の胸に顔を埋める。 「おめぇさん、誰かと勘違いしてんじゃねぇか?」  男はこんな少年見たことないと思いながらも過去の記憶を辿り、ふと、髪の毛に見覚えがあるのを感じ、毛先まで辿っていくと、毛先が黒髪で赤いジャケットの男――ルパン三世は頬を上げた。 「大きくなりやがって」  それでもあの頃の子供はそこにいるようで、これじゃまだ「相棒」というにはまだまだだ、と思い出しながらも、ルパンは少年の両肩を持ち少年を離した。 「久しぶりだなぁ、恋也」  10年の時を越えて、再び出会ったのは奇跡なのか偶然なのか、それともルパンがたまたま仕事でやって来たのか、それは誰も知る事はない。
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