第1章

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 席から立ち上がり、コンビニ袋に空になった袋と、紙パックを入れてゴミ箱にコンビニ袋を捨てる。 「俺の記憶が正しいかなんて俺だって分からないから、確認した」  机から飛び降りて、鞄を持って私の目の前に立つ。 と言っても教卓から私の席までの距離はあるけれど。 「で、一緒に帰っても良い?」  再度同じ質問をされて、両手にポケットに入れて「名前、教えてくれたら……」と俯いた。 今度はワザとではなく、どうしようもなく恥ずかしさを覚えたから。 「西東(さいとう)ちあき。そっちは?」 「仲田ちとせ」  互いに自己紹介をして暫く沈黙が続くも、ちあきが口を開いた。 「帰ろうか」  私は頷いて、席に戻って鞄を持ち、真っ赤な教室を後にした。  ちなみに私が人の名前を「さん」も「君」も「先生」も付けていないのは、特に理由はないが敢えて理由を付けるとするなら慣れないから。   『5月上旬。  今日一番嬉しいと感じたのは、図々しいかも知れないが、ちあきが私を庇った事でもなく、単純に一緒に帰って良いかと聞いてくれた事です。』
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