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「……さぁ、知らない。何処かの誰かが勝手に書いたんじゃない? 興味ないけど」
冷たく言い放つ。
その瞬間クスクスと西城が笑うのを聞きながらも、机の上に鞄を置いて腰を下ろす。
机の中には何も入れていないので、何もされなかったようだった。
問いに返答してくれた女子、名前は自己紹介の時に聞いていなかったのだから仕方ない、後で名簿標を見ておこうと決め、心中で礼を述べながらも、机の中に教科書類を入れるのは気が引けたので鞄の中に入れたままで鞄を机の横に掛けた。
「ねぇ、何とか言ったらどうなの?」
西城が教卓から私に問いかけた。
うざったい、という態度というより何も言わないので痺れを切らしたようにも思える。
「油性マジックで書いても重曹で消えると思うよ」
敢えて何で書いたのや何でそんな事思うの等の事は言わなかった。
全て事実という訳ではない。
万引きは只容姿が似ているだけで、万引きの現場には居合わせたものの、実際私はノートを買いにコンビニまで行き、万引き犯はパチンコ雑誌を服の下に入れて店を出ようとした所で、店員に見つかった。
似ていると言っても同じ茶髪で身長的もあまり変化が無いだけで、よく見れば私よりも万引き犯の方が胸はあったり、ウエストがくっきりしていたりした。
それで万引き女と言われると反論したい部分もあるのだけれど、私が反論したところで意味が無いだろう。
それよりも私の返答が気に食わなかったのか、西城は怒りを含めた表情で「そんな事聞いてねぇよ!」と怒鳴った。
怒鳴る程のものなのかと思いつつも、溜息等は零さず俯いた。
そうしている方が西城は喜ぶから。
案の定、嬉しそうに声を高くして笑っていた。
「初めからそうしてれば良いのよ」
西城の声はそれが最後だった。
教室に担任の武中亮輔(たけなかりょうすけ)がやって来たのだ。
さすがにいじめと呼べるのかは怪しいが、西城には見られたくないと判断したのだろう、ドアに武中のシルエットが映った途端、教卓から飛び降りて自分の席まで何でもない顔で戻った。
因みに西城の席は私の右斜め前である。
「お前らそのゲーム好きだな」
武中は教室に入ってくるなり、長谷部がしているゲームに気付き、気さく話しかける。
「あ、ちょっ……」
話しかけられて返答しようとしたのか、顔を逸らした隙にモンスターに攻撃を食らい、危うく死に掛ける所だった。
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