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それでも気を取り直して友人とゲームに集中する。
ここまでは何となくだけれど見えていた。
武中の服はいつも黒スーツでネクタイはしていないけれど、ボタンを開けてシャツをスラックスの中に入れている。
身長は長身になるのだろうか、見た感じは170前後。
武中が教卓に名簿を置いた表情を変えた。
私に気が付いたのだ。
「仲田(なかた)……。その机、どうしたんだ?」
当然教卓からでも見える落書き。
詳しく見えずとも何かが書かれていることは分かる。
それが普通ではないことも武中は気が付いたのだろう。
下に向いていたので顔をゆっくりと上げて前の教卓を見つめる。
確かに目の前の武中は『教師』として、私を心配する。
一人の生徒として私を心配し、一人の生徒として接する。
だからなんだという話なのだけれど、教師というのは教師でしかない。
教師が教師なら生徒も生徒だ。
「いえ別に。特に気にしてませんけど」
気にしているわけではない。
書きたいのなら書けば良いとさえ思っている。
書くなら真実だけを書いて欲しいというのが本音だったりする。
気にしていないから首を振って返答する。
だけど武中は気にしている気にしていないの問題ではなく、誰が書いたのかという事を尋ねていたと言う事には気が付いていた。
「自分で書いたのか?」
「読んでいた本で同じ事が書かれていたので真似してみただけ――」
「西城さんと名取さんが書いていました」
私の声を遮って誰かが喋った。
聞いたことある声の方を向けば、さっき冷たく言い放った女子だった。
頬杖を付きながら、本当に興味が無いのだろう、つまらなそうに欠伸をしてはHRまではあと10分あるのを黒板の隣に掛けられている時計を確認して、席を立った。
何処に行くのだろうかと思っていれば、後ろのドアを開けて右側に歩いて行った。
方向的には女子トイレと西多目的教室とその他の教室がある。
「西城、名取、今すぐ職員室に行きなさい」
武中は2人に命令して、ほぼ無理矢理と言う形で西城と名取と職員室に向かっていった。
茶髪の女子が戻って来て数分後に、副担任の岡本洋太(なかもとようた)がやって来て、HRが行われた。
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時は変わって放課後。
ほとんどが帰宅し、どこかのゲームセンターやスーパー、コンビニでたむろって居る時間帯であると言える。
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