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【帰宅/Return】
帰宅。
そうただの帰宅のはずなのに、いつもと違う。
隣に誰かが居る事なんて無かったからそう思うのだろうか。
「今日の授業ほとんど聞いてないって言うか、こう毎日プリントだと裏に落書きでもしたくなるなぁ」
道はそんなに細くも無いのだけれど、何故だかちあきが前にいて、私が後ろにいる。
その為表情は分からないが、肩が少し上がったので笑顔を浮かべたのだろう。
ちあきはニィっと笑って、そう言っているのだろうと予想を立てる。
その瞬間、春の風が後ろから吹いたのだけれど、それでも気にする事ではないのかちあきは笑ったまま、歩みを進めていた。
ふと、スカートの端から黒い布が見えて、思わず目を逸らしてちあきの後ろを歩く。
「ちとせー、聞いてる?」
くるりと振り返って私の方を向いた途端、チェックのスカートがヒラリと揺れて、少し捲れる。
見間違いではなければ、ちあきの膝には確かに黒い布が見え隠れしている。
「き、聞いてるって……」
少し、ぎこちない返事をしながらもちあきは教室では見せなかった笑みを浮かべながらも、膝より五センチほど下にある捲れたスカートの裾を元に戻しながら、「聞いてたなら何か言ってよ。俺途中で違う道から帰って行ったのかと思った」と、口にした。
そうじゃない、と口にしたいのだけれどあまりにも失礼に当たるだろうと思い何も見ていない風を装っているのだけれど、ちあきには見破られたのかそれともそういう表情をしていたのか、ちあきは「どしたの?」と首を傾げた。
「あー、えっと、スカートの下、何か穿いてるの? さっきから気になって……」
「あぁ。半ズボン穿いてる。長さがあるからちょっと折ってるけど」
ほら、と言ってちあきは恥ずかしがらずにスカートの裾両手で摘まんで私にスカートの中を見せた。
女の子なのにと思うけれど、確かにちあきの言うとおり黒い半ズボンが穿かれており、別に気にする事も無く、ちあきは両手を離す。
「スカートの中見られてもズボン穿いてるぜ、って言えるから中学の時から穿いてるな」
前を向いてちあきは続けて、ゆっくりと歩き出していく。
目の前ではないのだけれど、夕日がとても眩しく感じて顔の前に手をかざし、ちあきの後を追いながら最寄駅まで目指している。
その道中の事。
不意にちあきが「ちとせってさ、いじめられるの?」と尋ねてきた。
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