第1章

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 ふとどんな表情をしているのだろうかとちあきの隣に進み、顔を覗きこむようにすればどこか悲しんでいるように見えたのは私の錯覚なのだろうか。  ちあきにもまた、何かがありそうな雰囲気を出しつつも人通りの少ない道を歩いていると、途端に「今日、これから時間ある?」と尋ねてくる。 「え、まぁ……あるよ」  今日は父も帰って来ないので家には一人という状態なので、夜遊びなどはできるのだけれど、警察に補導されるのがオチなのでしないが、これから何処に行くのだろうという僅かな期待と不安で押しつぶされそうになりながらも、ちあきの隣でただ返答を待つ。  こうやって誰かと放課後遊びたいと思っても、誰一人友人といえる友人は居ない。 数回話す程度なのはあるのだけれど、一緒に帰ったり、話をしたり、どこかに行く可能性もある会話もした事がない。 「どこか行くの?」 「行きたいけど、制服だと面倒だからな。俺の家でも来るか? 門限の時間までなら何か話していても問題ないだろ。外だと体調崩しやすくなるしな」  そして、駅が見えて、改札口に行く前に切符を買うと言ったちあきに続いて私も切符を購入し、2番ホームが丹神橋駅行きだったので、2番ホームに向かう。  丹神橋市は基本的に普通、快速、区間快速、全て止まるのでどれに乗っても問題はない。 だから来た電車に乗れば良いのだけれど、次の電車があと30分で来ると電光掲示板で確認したちあきは、2番ホームに向かう道中にあるシュークリーム屋でシュークリームを購入した。  期間限定の抹茶シューだった。 「ちとせは? 甘いのと抹茶嫌いじゃなかったら買ったら?」  一瞬どうしようかと悩みつつも抹茶も甘いのも嫌いじゃなく、寧ろ好きなので買おうと思ったのだけれどその抹茶シューが二百三十円で、今の手持ち金が百十円だった。  千円があるかと探してみたのだけれど千円札は見つからず、買えない状態になる。 「百十円しかないから良いよ」 「一個ぐらい奢ってやるのに」 「良いよ、悪いし」 「俺この五百円崩したいから奢らせろ」  どうして今日話したばかりのクラスメイトにそこまでするのだろうと思いながらも、ちあきを止める事は出来なくて、もう一つ抹茶シューを購入すれば私に渡してくる。 「ありがとう」
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