第1章

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 そんなことしなくても良いのに、と思いながらも抹茶シューを受け取って一口かじれば抹茶クリームが丁度丁度良い具合の甘さで、私好みの味だった。 端から見れば女子高生2人がシュークリームを食べているだろうと思いながらも、行儀は悪いものの、食べながら2番ホームに足を進めた。  ちあきは食べるのが早いのかもうシュークリームを食べ終わっていて、一緒についてきた包み紙をゴミ箱に捨てている。  その様子を見ながら残り半分のシュークリームを食べながらも、ちあきが私に謝罪した。 「あ、そういえば抹茶オレ飲んでたから抹茶嫌いじゃなかったな。ごめん」  特に気にしていない事を謝られて首を振り、気にしていないという意思を伝えつつも残り三分の一になったシュークリームを食べ、口を動かしていれば丁度アナウンスが聞こえて、あと20分で電車が来ることが分かった。  最後の一口を食べて包み紙を全体が銀色のゴミ箱に捨て、イスに腰掛けながらちあきに尋ねた。 「どうして、そこまでするの? 今日話したばかりのクラスメイトなのに、奢ったりなんて普通は出来ないと思うけど」  俯きながら尋ねれるとちあきが隣に座って、今日初めて聞いた時と近い声で返答した。 「『俺の周りにそんな考え方する人居なかった』って、言ったのは覚えてる?」 「うん、まぁ」 「それって捉え方によると『ちとせがひねくれ者』ってのと『俺がひねくれ者』って捉え方があるのは知ってる? 周りにそんな考えを持つ人が居ない。それってつまり、自分と考えが合わない、って事だと思わないか?」  多分私を見ながら言っているのだろう。 だけれど、そうだとしてもどうして、私にそこまでするのか、それは分からない。  不満、後悔、恐怖、不服、どれも違うけれど、それと似たような感情なのは分かる。 私が今、不安で疑問を持って、自分が自分じゃなくなる様な感覚に浸っているのだ、という事だけは理解ができている。   「でも、それだと、奢る理由にはならない」 「奢るのに理由がいるのか? 何か理由を付けて欲しいのか? あんな財布の隅から隅まで探してるの見たら買いたいって気持ちが何処かにあるって事だろ。それで、足りなかったんだから、奢ってあげた。それは理由にはならない?」  特殊、その言葉が頭から離れない。 私ならそこに居たのがちあきじゃなくても例えちあきだとしても奢ろうとは思わなかっただろう。
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