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あれから何事も無く歩き続けて山の方に向かっていれば、1つの館が見えた。
木で出来ていて館に近付くに連れて、看板にぼんやりと書かれていた文字がくっきり見えてくる。
看板には『二階堂旅館』と木製看板に筆で書いたような字で書かれていた。
旅館、つまりは温泉、と言う風に捉えても良いのどうか判断がつかない。
「二階堂、旅館?」
聞いたこともない名前だなと思っていたら声に出ていたのか、隣でりとが微笑した。
笑われた事に少し不快な思いをしていれば塩水の匂いがした。
そもそも塩水に匂いがあるのかも怪しいが耳を済ませていると波の音が聞こえたので海だと脳で判断し、塩水の匂いがしたと思ったんだろう。
二階堂旅館は引き戸でガラガラと昔懐かしく戸を開けると、立派な旅館だというのが何故かすぐに分かった。
右に下足入れがあり、ほとんど靴が入っていた。
小さい子用の靴や、大きな革靴、学生が履いている運動靴、家族連れやサラリーマン、学生と様々な客がいるのだろうか。
左には旅館の近くある店の名前や観光地などが細かく書かれていた。
その1つに音がする白浜と書かれていた。
どうやらすぐ近くにある海のことだ。
「おい、恋也」
真ん中に受付があり、チェックイン出来たのだろうかりとが名前を呼ぶので受付の方を見る。
りとは手招きをしながら俺を呼んでいたらしい。
靴を脱ぎ、館内専用の青スリッパに履き替えてりとの元まで向かっていく。
「部屋梅の間の2番だ。先に行ってろ」
「りとは?」
「俺は後で行く。だから先に行ってろ」
「分かった」
頷いて「梅の間」に向かう。
どこにあるのかは分からないが、大体上を見たら書いているので上を向いてみる。
木製の矢印に「梅の間」と書かれていたので矢印の方向に進み、梅の間に着けば2番と言われたので、2番の部屋の前に来れば一度息を吐いてから戸を開けた。
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