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温泉旅行(前編)
旅行、それは楽しいものであって決して兄弟で行くようなものではないだろう。
仲が特別に良いのなら問題はない――はずだ。
けれど俺と兄りとの兄弟仲を知る者はまず、目を見開いてありえないと言って驚くだろう。
俺とりとは、誰がどう見ても仲の悪い兄弟な為2人だけで旅行をするという事自体をしない。
何故俺とりとが旅行に行くことになったのかと言うと、大体一週間前に遡る。
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一週間前の今日、俺の机にメモが置いてあった。
学校から帰って自室で電気をつけ、ベッドやクローゼットの位置が把握できると、赤いブレザーを脱ぎ、ハンガーに掛けてクローゼットの中に仕舞った。
宿題でもしようかと制服姿のまま、パソコンを置くように買っただけの勉強机にあるイスに腰掛けて空いているスペースに鞄を置けば黄銅色の机の隅っこに白いメモがポツンと置かれていた。
自分で置いた気はしなかったので、一緒に住んでいる誰かなんだろうと思いつつ、俺が見ている側では真っ白で、手にとって裏返してみると文字が書かれていた。
『来週の今日、中央駅に来い』
それだけが書かれていた。
今日は金曜日な為、来週も平日じゃないかと思い、机に置いてある小さな三角のカレンダーを見ると、来週の金曜日は創立記念日で学校が休みだと思い出す。
これを書いたのは字体的にりとだと判断出来るが何故、普段部屋にも入って来ない兄がメモを置いたのだろうと不思議で仕方なかった。
「中央駅、なんでまた……?」
何故、中央駅に行かないといけないのだろうと思いながら俺はそのメモをゴミ箱に捨てた。
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