温泉旅行(前編)

4/11
前へ
/11ページ
次へ
溜息を吐き――少し高鳴っている鼓動には気付かぬふり。 俺は電気を消して、肌寒いと思いながら半そでと半ズボンで布団の中に入って目を閉じた。 完全に眠りについたのは午後11時半ぐらい。 ** そして次の日、俺は確かにアラームをセットするのを忘れていた。 目が覚めると何かが違うと思い、時計を確認すれば午前6時15分。 完全に遅刻。 目が覚めたのが15分、此処から中央駅まで徒歩で30分、自転車で信号待ちをした場合約10分取り合えずベッドから降りて服を着替え、貴重品(携帯や財布)をポケットに入れて階段を下り、お手洗いに行ってから洗面所に向かう。 櫛で髪を梳けば後ろで1つにまとめて顔を洗い、そのまま歯を磨く。 大体10分ぐらいで準備が出来て時計を見れば、6時25分。 不機嫌で待っているんだろうなとあまり良い気分にはなれないが、歩きながら髪をハーフアップにして部屋に着けば半そでの灰色の生地が薄いパーカーを羽織って玄関に向かい、靴を履いて外に出る。 暫く使っていなかった自転車を見つけても使う気にはなれなかったので、徒歩で向かう事にした。 イヤフォンを忘れたので音楽を聴きながら行けない事に気が付いても取りに帰ることはせず、ひたすら中央駅に向かう。 ドタキャンすれば良いのにと自分でも思ったが、後々面倒なので行くしかない。 ベージュ色のジーンズの膝裏部分に汗が滲んでいるのが歩いているのでよく分かる。 七部袖の白ワイシャツの肘部分でも同じよう汗が滲んでいる。 30分も遅刻しているのに電話がないというのが意外だ。 普通なら電話してくるだろうと思っていると信号が赤になったので立ち止まる。 急いでいたからなのか、街の景色を見てみると朝早くに外に出ないため、人の気配がしないことに気付く。 そりゃぁまだ7時にもなっていないので、学生も居ないだろうと思っていると信号が青になったので再び歩き出す。 気持ちは急いでる。 やっと中央駅に来れば、20歳ぐらいの男性や、高校生ぐらいの女の子2人、駅員にさっきとは違って人がたくさん居た。 やはり駅は人が多い。 そんな事を思っていると、自動切符売り場で見慣れた金髪が目に入り一瞬躊躇したがゆっくりと金髪の男の所まで歩いていく。 そして――「りと」と声をかける。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加