第1章

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未遂でも実行でもない、何故か、酒を飲まされている。  一瞬睡眠薬でも入っているのかと疑ったが、目の前で酒が注がれるのを見れば、薬など入っていないだろうと、脳が勝手に判断する。  氷に薬が仕込まれているなど、考えもせずに。  **  あの後恋也は緑ジャケットのルパンに連れ去られて、少し狭さを感じるアジトで、何故だかグラスを片手に、酒が注がれている。  冒頭で述べたように、睡眠薬でも入っているのか疑っていた恋也だが、全く同じ酒をルパンは自分のグラスに注いだ。  何をしたいのか、恋也は理解に苦しんでいる。 「まぁ、1杯いこうや」  ルパンは持っているグラスを軽く傾ける。 乾杯という事なのだろう、そう判断した恋也は腕を伸ばして目の前に置かれているグラスを手に取り、ルパンが持っているグラスに軽く当てる。  カンッ、グラスが当たる音を確認してから、グラスの中に注がれている酒を見つめる。  種類は何だろうか、恋也自身日本酒とビールとカクテルは飲めるが、ジンやウォッカ、ウイスキーやバーボンはまだ飲めない。  酒自体飲めない年齢なのはこの際気にしないでおこう。 「ウイスキー、飲んだ事ねぇか?」  ルパンは普段と変わりなくグラスに口をつけているが、恋也は全くグラスに口をつける素振りはなく、ただグラスの中身を見つめていた。  不思議に思ったルパンは恋也に問う。  灯りなんてものは、裸電球だけで、昔の家の雰囲気など出ていたりするが、そんな事は気にも留めていなかった。  ルパンの問いには素直に頷いたが、好きか嫌いかなんて飲んで見なければ分からない。 だから恋也はグラスに口をつけた。  そのまま、薬9割、水1割で作られた氷が溶けて、ウイスキーの中に薬が混ざっているとも知らずに、恋也はゴクリと喉を鳴らしながらウイスキーを口にする。  その時のルパンの表情なんて誰でも想像できるぐらい簡単なものだった。  口角を上げ、罠に掛かった鼠でも見るような顔で恋也を見つめながら、ウイスキーを飲むのを続けていた。  恋也にとって初めてのウイスキーは、何とも言えない味で、ただアルコール度数が高いというのが良く分かったぐらいだ。 「けほっ、けほっ」  あまりにもアルコールがきつかったのか、蒸せており、口元に手を当てながらも荒い息を整えようとしていたのだ。
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