第1章

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 ルパンの問いすら答えることが出来なくなってきているのか、恋也はトロンとした目でルパンを見つめて、「……うん」と意味も分からない、何に肯定したのか分からない返事を返した。  どこか眠たそうな雰囲気を放っている恋也にルパンは、変わりの無い笑みを浮かべつつ、グラスをデスクに置き、右手で恋也の顎を摘まんだ。  そのままゆっくりと顔を近づけていき、そのまま軽く恋也の唇に振れた。  まだ16歳にもならない少年の唇は、女と全くではないが、確かに未成年と言う柔らかさを持っており、先ほど口につけたウイスキーの味が微かに残っていた。 「……? なっ!」  かあぁと音が出るぐらいに恋也の頬は赤くなっていき、薬の効き目で眠たくなっていたようだが、自分がされたことを理解した途端に、目は覚めていき次第には耳まで真っ赤にさせている。  それもそうだろう。  酒を飲まされて、気が付いたら自分よりも遥に年齢が上の怪盗に、しかも同性にキスをされた。 そんな事、誰も考えないし予想もつかないだろう。 「……欲求が溜まってるなら、女抱けよ」  文句の様に呟いた言葉は、いつもの様に軽く受け流され溜息を吐きながらもまだ信じられない恋也は、ソファの背凭れに身体を預け、吐息を吐き出した。  水でも欲しいのだが、生憎目の前にあるのはウイスキーなので、渋々と言って良いほど、グラスを手に取り、ウイスキーを口に流し込んだ。 「こうやって、お前を口説くのを楽しみにしてたんだぜ?」 「何をバカな事を……」  はぁ、ともう一度溜息を吐いた恋也には関係がないようにルパンは背凭れの後ろに手を回して、天井を見上げつつ「人生で1番恐いものは『退屈』、だろ?」と、確認するように尋ねた。  その問いに答えようとはせず、グラスを置き暫くお互い沈黙が続く中、本日何度目かのカラン、という音を聞き、ルパンの顔を見ることはせず「俺を抱いたら退屈じゃなくなる、とでも?」何て、聞き返す。 「やってみねぇと、分からない事もあるんだぜ」  試すような、誘うような口調で恋也の口元にルパンは手を置き、そのまま再び顔近づけていき、そっと唇を合わせようとした途端、恋也はルパンの首に腕を回し「『媚薬』なんて使わなくても、俺をこういう風に出来ただろ」と、呟いては自分から後ろに倒れた。
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