第1章

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 本日56回目の溜息。 1日で56、1週間で言えば125回目の溜息。 「――あのさ……いい加減決着付けてくれないと、こっちも色々事情ってもんが……」 「あら、レディにそんな事言う気?」  赤いブレザーを身に纏い、制服姿で居る少年――六条道恋也に、スタイルが良い女、文字通り胸も大きく、腰周りも女性誰もが憧れるスタイルの女――峰不二子が上目使いで少年を見上げる。  その状況だけ見れば口説いていると言うと思うがまぁ、口説かれていると言えば口説かれているようである。  恋也本人は適当に流したりとしている様だが。 「そんな事って、俺の本業は『学生』。盗みが副業ってだけ」  はぁ、と本日57回目の溜息を零す。 1日でこんなに溜息を吐く事はないのだが、ここ一週間溜息しか出てこないとしか言えない状況である。  **  ―1週間前― 「――って、何で不二子ちゃんが居るの?」 「あらやだ。私が居るのはいけないの? ルパン」  ルパン、次元、五ェ門が次の仕事の打ち合わせをリビングでしていた時だった。  丁度音もなしにやってきた不二子がその話を少しだけ聞いており、ルパンが話し終えたと同時に不二子がリビングに繋がる木製のドアを開いたので、正確にはほぼ聞いていないのだが、居ないと思っていた者が居たのはルパンにとっても驚きだ。 「不二子と組むなら俺は降りるぜ」  はっ、と次元がお決まりと言うように鼻を鳴らし、ガラス製のテーブルの上にソファから伸ばした足を置き、片手を頭の後ろに当て、バーボンを飲みながら仕事をしないと宣言する。  当然いつもの事なのだが、不二子は次元の発言に腹を立て「ちょっと何よ、まるで私が疫病神みたいな言い方じゃない!」フンッと腕を組んでそっぽを向く。 もう一度言おう、いつもの事だ。 「疫病神だろ、お前さんは。いつも裏切りやがって」  机から足を下ろし、右手に持ったグラスを不二子に向けながら馬鹿にするような言い方で、左手を胸の辺りに持ってきて、ヒラヒラとさせてあっちに行けという動作をした。 「ルパーン、私って疫病神なのぉ? 正直に言ってお願い」
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