第1章

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 恋也は声がした方に行き、思った通り快刀が居たのだが、快刀の持っている今月号の校内誌を奪い取った。  一通り目を通すと、やっぱり『今月の付き合いたいランキング』に自分の名前が載っている。  何が楽しいのか、それを知ってどうするのか、恋也には分からない。  自分がイケメンだと言われたらそうなのだろう、自分ではイケメンなどとは思っていないけれど周りから見たら、自分はイケメンの部類に入るのだろう、そう思っている。 「毎回何で俺と付き合いたいって思うのか分からないな」  奪い取った校内誌を快刀に返し、廊下の壁に凭れるように背中を預けて天井を見上げる。 白い壁に穴など開いてはおらず、それほど清潔にされてるのか、礼儀正しいのか、自分では判断がつかないほど、この学校は綺麗過ぎる。 「簡単な話さ。お前が優しすぎるんだ」 「優しいって言われてもな……」  納得がいかないような返事をしつつ、その場から去るように背中を離す。 「そう言えば六条道――」 「変装は上手いけど、そのファッションどうにかならなかったのか? すぐに分かったけど」 「こっちの方が分かりやすいだろ」  あそう、適当に返答すればそのまま快刀から離れていき、急に教師口調で話しだした快刀のセリフを遮って言ってしまった事に反省せず、そのまま帰宅して行った。  ** 「次元、ルパンが俺の学校に来たんだけど」 「ほっとけ、すぐに飽きるだろ」  適当にあしなわれた感を覚えつつ、リビングのソファに鞄を下ろし、キッチンで紅茶を作っていると、玄関のドアが開く音がした。  ルパンは学校、次元はリビング、五右ェ門は買い物、となると、残るは不二子か銭形だろう。 そっとポケットに隠してるナイフに手を伸ばし、誰かが来るのを待つ。  するとドアが開かれ、見慣れた姿が目に入る。 「ちょっと次元! ルパンが恋也の学校に居るなんて聞いてないわよ! 教師は私のアイデンティティよ!」 「何がアイデンティティだ。お前さんは秘書でもやってろ」  峰不二子、敵襲ではなかった事に安堵しつつも不二子の言い方に違和感を覚える。 何か可笑しい、そう思ってはいるものの何がおかしいのかよく分からない。  暫し考えて『ルパンが恋也の学校に居る』というセリフに顔が引きつるのを覚えた。 「まさか不二子まで俺の学校に来てるのか!?」
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