第1章

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 紅茶を淹れたカップを持ちながら、恋也はキッチンから出てきた。 「ちょっと急に出てこないでよ!」 「あぁ、悪い。ってそうじゃなく、何で2人も来る必要があるんだ! 体調崩した教師は1人だ」  ルパンを見てから、ルパンが何かしたのではないかと思ったのだが、職員室に行って前の担任がどうなったのかを尋ねてみると、インフルエンザだったと隣のクラスの担任に教えられ、安堵していた。 偶然体調を崩したのは1人で、ルパンが変装してやってくれば不二子はどうやって、教師として学校に入ったのだろう。 「ルパンは担任、私は転職してきた先生よ。ちなみに次元はルパンのボディガード」 「お前もか」  次元を睨みつけては呆れて、ソファに腰掛け紅茶を口に流した恋也はカップをテーブルに置き、ソファに横になった。  いくら自分から言った事でもそこまでするのかと言う、大人の本気を知らされた気分になる。  よくルパンが『大人は怖い』と言っていたのを思い出し、まさにその通りだと知る。 「ところで恋也君、お姉さんが楽しい遊びをしたくない?」  不二子は横になった恋也の太腿をなぞる。 本気で組みたいのかと思うのだが、「したくない」と返答する。 「そんなにルパンが良いの?」  不二子に聞かれた質問だった。 いつもの様にお色気たっぷりの声ではなく、真面目に聞かれたんだとこの時理解し、不二子の表情を伺う。   「不二、子……?」  不二子の名前で呼んでも、不二子は返答することなく、恋也から離れていった。  ** 「大分てこずってるじゃねぇかルパン」 「今回ばかりは恋也を組ませねぇとならねぇんだ」  恋也が眠った時間帯に次元とルパンは酒を飲みながら、リビングで話し合っていた。 次元がいつも通りにてこずってると言ったら、真面目な顔つきでルパンはグラスを傾けながら、返答した。   「そんなに厳しいセキュリティでもないのにか?」  次元の問いにルパンはグラスの中に入っているウイスキーを次元にかけた。 その表情はどこか焦っているようにも見える。 「バカ言ってんじゃねぇ。約束しちまったんだよ、アイツと」  ルパンにとって今回盗みに行くのはただのついで。 それを伝えていなかったのも悪いのだが、何かを約束したというルパンに全身ウイスキーまみれになった次元はソファから立ち上がり、タオルで濡れたところを拭く。
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