第1章

6/20
前へ
/20ページ
次へ
 日本人の血が多いからだろうか、日本人特有の『ただいま』を言って独り言の様に呟いてから、どうせ来てるなら、リビングだろうと思った恋也は、リビングまで歩いて行き、リビングに繋がる薄い茶色のドアを開く。 「……俺入らない方が良かった空気?」  ドアを開けた瞬間恋也が目にした光景は、自分から見て左側にイスに反対向きに座るルパンと、手前のソファに横になっている次元と、その向かいのソファに座禅をしている五ェ門と、自分から見て右側に、大人しい服装をして凄い怒っているというのが分かる不二子が居た。  一瞬入らない方が良かったのかと思い、距離的に1番近い次元に尋ねてみた所、別にそういう訳でもないようで、軽く息を吐いた。 「もう良いわ! 直接恋也に聞くもの!」  最終手段、と言うよりお得意と言った方が納得されやすい不二子の十八番。 恋也に近付いて首に手を回し「ねぇ、私とルパン、どっちが好き?」なんて色気のある声を恋也の耳元で出しながら尋ねる。   「どっちもどっち。良し悪しがあるから何とも言えない」  さすが私立名門高校の校内2位の回答である。 解答用紙のような返答をしたのは良いが、何となく違うような気もしていたが、状況が掴めないので、不二子の様子から伺おうと考えている。 「そうじゃなくて、私とルパン、一緒に寝るならどっちを選ぶ?」 「迷わずぬいぐるみ」  その場に居た、次元と五ェ門が吹いた。 無理もないだろう、選択肢に無いそれも人ではなく物と一緒に寝るというのだから、笑いもする。 それを笑うなと言う方が難しいに決まっている。  絶対に答えてはいけない質問だな、と思った為ただの嘘なので不二子にもばれているのは承知だが何故、その質問をしてくるのかと予想するしかない。 「真面目に答えなさい!」 「はいはい」 「『はい』は1回!」  親と子のようなやり取りをしつつも、不二子は自分の脚を恋也の脚に絡めて「お姉さんとイイコトしない? とっても楽しいこと」と上目使いで尋ねる。  ここでの『イイコト』は思春期が思う事ではなく『盗み』の事だ。 「ベッド行きの方はしたくないな。気分じゃないし」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加