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春の上旬。
寒さを感じない季節はどうしても眠気を誘うものだ。
「ルパ~ン、デートしなぁい?」
ふとソファにだらしなく横になった次元が「眠気を誘う」と思っていた頃に、アジト内に甲高い女性の声が響く。
不二子か、と声だけで確認しつつも、不二子が大好きなルパンの返答がない事に気が付く。
「ルパ~ン?」
一つ一つの部屋を見て回っているのだろう、遠くから聞こえてきた声がだんだん次元に近付いてくる。
バタンッ、と隣の部屋のドアが閉められてリビングに不二子が姿を見せる。
「あら、次元一人だけなの?」
不二子の問いに帽子を軽く上げ、「五右ェ門は修行。ルパンは起きた時からいねぇぜ」と返答した。
どうやら不二子はリビングにルパンが居ると思ったようで、リビングに次元一人しか居ないことに驚きながらも、辺りを見渡す。
見渡したところであるのはソファとテーブルとウイスキーと、次元とその他諸々なのだが、肝心のルパンの姿がない。
寝室にも居ないことを確認している不二子は、何処かに出かけたのだろうかと思い、次元の目の前にあるソファに腰掛ける。
「そういや不二子。いつルパンとデートの約束なんかしたんだ?」
次元は上半身を起こしながらも不二子に尋ね、片手でウイスキーが入ったグラスを持ち、口に運ぶ。
「今よ」
即答である。
「全く、『お姫様』の扱いも分からないのかしら」
脚を組みながら偉そうに呟く。
その姿はまるで女王だな、と内心思いつつも次元は口に出さず酒を煽り続ける。
よく見れば不二子の服装が、いつもとは違う雰囲気を放っていることに気が付き「おめーさん、そんな服持ってたか?」と聞くつもりは無かったのだが、声に出ていたようだ。
脚を組み替えながら「あら? レディがデートに着る服は普段とは違う服にするに決まってるじゃない」女の常識、と言うように首元にある髪を後ろにしながら述べる。
今日の不二子の服は白を基調とした大人しめで、腰に茶色の飾りベルトが付けられ、黒のオーバーニーだった。
太腿にはいつもの様に拳銃があるのだと思うと清楚でもなんでもないのだが。
「ルパンも用事があんだろうよ、今日は諦めな」
そうした方が身のためだと言う様にグラスを不二子に捧げるようにしては、鼻で笑って残り少ないウイスキーを口に流しこんだ。
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