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――最悪だ。
本当に最悪だ。
確かに体調は良くなかった。
朝起きたら37度8分の熱があったのは確かだ。
なのに熱があったのに学校に行ったのがいけなかった。
別に授業中なんて殆ど寝ているので、教師に見つかって帰らされることはない。
俺にとっても兄ちゃんを呼ばれて家に連れて帰られる、なんて事はされたくない。
迷惑をかけたくない、と言えば聞こえは良いが、実際の所、こんな姿を見られたくない。
だから学校に行く途中にある薬局で熱を下げる薬を買った。
その薬と自販機で買った水を飲んで、学校に行けば1時間目ぐらいにはもう熱は下がっていた。
「……菅野?」
1時間目と2時間目の間にある休み時間。
たったの10分しかないが、俺にとって10分は貴重だったりする。
机に伏せていると、頭上から声がする。
重たい頭をゆっくり上げると、クラスメイトの名前は良く覚えていないが、気さくに声をかけてくる。
どうしたのだろうと思っていれば、廊下を指差して「3年の春雲路(しゅんうんじ)先輩が呼んでる」と言った。
廊下をぼんやり眺めれば確かにそこには先輩の姿が存在していた。
超金持ちの坊ちゃんの姿が。
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