先輩の友人

5/12
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「へ、へぇ……。そんな人、俺知らないです」 「丹神橋(にしんばし)高校の六条道恋也、学内2位の成績なんだけど、知らない?」 「……名前、どこかで聞いた気がします」 「まぁ、一番難しい高校の学内2位の成績だから、有名なのは確かだね」 友人が話していた記憶がある。 『丹神橋高校の六条道恋也ってヤツ、高1なのに学内2位の成績だって。学内1位ソイツの兄貴のりとっていうヤツ。兄弟そろって天才とか羨ましいよな』 いつの事だったかは忘れてしまったけれど、確かにそんな事は口にしていた。 「それがどうかしたんですか?」 先輩は嬉しそうな、でも悲しそうな表情でこう述べた。 「僕の好きな人でもあるかな」 実の兄を恋愛対象で見ている俺が言える事ではないが、同性を好きなる先輩もあまり理解は出来ない。 愛の形は自由だというけれど、そう簡単に自分の周りに同性を好きになる人なんて、いるのだと改めて気付かされた。 「でも、恋也にはもう付き合ってる人いるから、僕は立ち入り禁止って感じ」 少し悲しそうに、そう告げる。 「……会ってみたいです」 そんな有名人なら会ってみたい。 先輩が好きになった人を見てみたい。 俺がそんなことを言うと、先輩は携帯を取り出して「会いたいなら連絡入れるけど?」と言ってくる。 「会いたいです」 素直に自分の気持ちを伝える。 そうすれば先輩は携帯を操作して、片耳に当てた。 数回のコールで「恋也」と言う人物が出る。 『はい。どうかしましたか?』 「久しぶり……と言っても一昨日ぶり、かな? 単刀直入に言うけど、恋也に会いたい人が居るんだけど、今日って予定空いてる?」 通話口の向こうから紙を捲るような音が聞こえてくる。 何をしているんだろうと思うけれど、俺が聞くことなんてできやしない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!