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「へ、へぇ……。そんな人、俺知らないです」
「丹神橋(にしんばし)高校の六条道恋也、学内2位の成績なんだけど、知らない?」
「……名前、どこかで聞いた気がします」
「まぁ、一番難しい高校の学内2位の成績だから、有名なのは確かだね」
友人が話していた記憶がある。
『丹神橋高校の六条道恋也ってヤツ、高1なのに学内2位の成績だって。学内1位ソイツの兄貴のりとっていうヤツ。兄弟そろって天才とか羨ましいよな』
いつの事だったかは忘れてしまったけれど、確かにそんな事は口にしていた。
「それがどうかしたんですか?」
先輩は嬉しそうな、でも悲しそうな表情でこう述べた。
「僕の好きな人でもあるかな」
実の兄を恋愛対象で見ている俺が言える事ではないが、同性を好きなる先輩もあまり理解は出来ない。
愛の形は自由だというけれど、そう簡単に自分の周りに同性を好きになる人なんて、いるのだと改めて気付かされた。
「でも、恋也にはもう付き合ってる人いるから、僕は立ち入り禁止って感じ」
少し悲しそうに、そう告げる。
「……会ってみたいです」
そんな有名人なら会ってみたい。
先輩が好きになった人を見てみたい。
俺がそんなことを言うと、先輩は携帯を取り出して「会いたいなら連絡入れるけど?」と言ってくる。
「会いたいです」
素直に自分の気持ちを伝える。
そうすれば先輩は携帯を操作して、片耳に当てた。
数回のコールで「恋也」と言う人物が出る。
『はい。どうかしましたか?』
「久しぶり……と言っても一昨日ぶり、かな? 単刀直入に言うけど、恋也に会いたい人が居るんだけど、今日って予定空いてる?」
通話口の向こうから紙を捲るような音が聞こえてくる。
何をしているんだろうと思うけれど、俺が聞くことなんてできやしない。
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