先輩の友人

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『あー……天刀(あまと)、今日って、大丈夫なのか?』 「えっ、あ、まぁ……。どうにかなると思う」 『そうか、特に用事もないから会いたいって言ってる子にもよるけど、今日はいつもより学校終るの遅いから5時に来てくれ』 「分かった。うん、分かった伝えておく。じゃぁね」 そう言って、通話を終了した先輩を見つめていた。 先輩は携帯をポケットに仕舞い、俺に笑顔を向けて「恋也が門限とかあったら教えてくれって」と言ってくる。 特に門限もないので、首を振って伝えては後で兄ちゃんにメールを打っておかないと、と思っていると予鈴がなったので、先輩と放課後正門の前で待ち合わせをして、自分のクラスに戻って行く事にした。 会いたい人に会える喜びもあって、熱は少し、下がっていた。 ** 6時間目。 残り約13分。 何となく窓の外を見つめる。 机に伏せている状態でもある為か、教師が俺の異常さに気付くことはないのだけれど、熱で麻痺してる俺の体は、限界に近かった。 ――早く終らないかな。 あと12分、耐えれば良い。 そんな思いでピッタリと膝をくっつける。 その瞬間、熱いのが溢れたけど、気にしている余裕はなかった。 「10分早く終ったから、反省文対象にならない休憩をしてください」 授業がいつもより早く終わって、各自机に伏せたり、ヒソヒソと会話をしたりしている中、俺は窓の外を懸命に見ていた。 「菅野……お前は寝てばっかりだな。ほら、プリント写せ」 こんな時に限って起こしにくる教師はどうにかできないだろうか。 プリントを写すのが面倒じゃなくて、ただ起きるのに苦労するだけなのに。 体を起した瞬間、なんとも言えない圧迫感が襲って、無意識に顔が引きつった。 「あと3分だから号令するぞ」 教師の命令と共に、クラスの全員が立って、礼をして、チャイムが鳴り、担任がやって来て、HRが始まる。 そんなに長くないHRはいつも通りすぐ終り、皆各自解散となった今では、すぐに駆け込みたいのに、体がいう事を効かない。 早く会いたいという気持ちには勝てないのか、俺は自分のクラスから出て、正門に向かってしまった。
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