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「あ、やっぱり早いね」
正門にはもう先輩が居て、にっこりと笑みを浮かべていた。
「じゃ、行こうか」
兄ちゃんにメールする事も忘れて、ゆっくり負担を掛けないように歩いていたのだけれど、突然急な波が襲ってくる。
どう対処して良いのか分からずにそのまましゃがめば前から「大丈夫?」と声が聞こえる。
「だ、大丈夫……です」
ゆっくり立ち上がって、ズボンのポケットに手を入れ、こっそり中心部を押さえながら歩く。
大分歩いたところに駅があり「電車乗るけど、先にトイレ行く?」と尋ねてくる。
俺は首を振って返答すれば、先輩は携帯を取り出してそのまま改札口の光っている部分に当てた。
その瞬間、ピコンという音と共に半透明に2人分、と青文字で書かれたのを見つめながら、ホームに向かう。
『まもなく、3番乗り場に快速丹神橋行き電車が7秒で到着します』
アナウンスを聞きつつも、足踏みをしながら電車を待っている俺に、先輩は声を掛けてこない。
電車特有の音が近付いてくれば、ドアが開いて、ゆっくりと電車に乗って、幸い人が少なかったので、シートに腰掛けた。
他の人には見えないように、鞄を膝の上に置いて両手で中心部を押さえる。
「我慢できそう? 無理そうなら次の駅で降りるけど」
小さく耳元で尋ねられる。
「できます……」
出来る訳がない、そう思っていても、我慢できないなんて言えなかった。
いや、言いたくなかった。
『次は中央駅、中央駅です。お出口は左側です』
何駅目かは分からないが、アナウンスが聞こえて、次降りるよと言われて俺は立ち上がる。
その瞬間ガタンッと電車が揺れ、前に倒れる。
先輩は前に居たので、倒れてきた俺を支えてくれたのだが、刺激が強かったのか、じゅわりと下着が一気に濡れた。
「す、すみません……!」
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