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遠慮がちに声を掛けられて目が覚める。
ぼんやりとした頭では、今が何時なのか全く分からないが、デジタル時計を見て、今が深夜2時だというのを確認する。
そんな夜遅くに俺の弟は一体どうしたのだろうか。
「あの、さ……」
「どうたした?」
聞いても答えようとはせずに、どこかそわそわとしながら目の前に立っている。
たまに足踏みや「ぁっ、ゃっ」と小さいが声が漏れている。
――ピチャ。
確実に良太の股から一筋の糸が出来て、床に落ちた。
その瞬間、良太は顔を真っ赤にさせて首を振った。
「ち、ちがっ!」
違う、と言いたいのだろうけど、俺かしてみれば確実なお漏らしだ。
幸い大量に出ていたわけではないので、足踏みをしながら耐えている。
前を押さえないのは俺にトイレを我慢しているのを、知られたくない唯一の抵抗なんだろう。
その辺りはまだ反抗期中か。
「いつから我慢してた?」
「我慢なんかしてない」
「じゃぁさっきのは?」
「あ、汗……」
諦めが悪いのか反抗期なのか、俺を起したのは1人でトイレに行きたくないからだろう。
それを早く言えば良いのに、全く言おうとしないのは、俺に気が付いて欲しいのか、違う理由なのか。
溜息を吐いて、ベッドから起き上がれば良太の足元に小さな水溜りが出来ており、アンモニアの臭いが鼻につく。
「――良太」
俺が声をかけるほんの少し前に、良太は前をギュッと押さえ、その場に座り込んでしまった。
よほど限界が近いのだろう、見ている側も焦ってしまうほど真っ赤な顔をしてモジモジして、息を荒くしている。
多分、トイレに行くのも不可能だろう。
トイレに行きたいのを我慢して、遠慮がちに声をかけてきた頃にどれぐらい我慢していたのかは知らないが、かなりの時間我慢をしていたのは理解した。
だから、仕方なく、それを差し出した。
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