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意識が覚醒していく。殴られた額がまだズキズキと痛む。
「どこだ……ここ」
剛士が、目を覚まさしたのは、コンクリートの壁に囲まれた、20畳くらいの部屋。鼻につく誇りの匂い。部屋は薄暗く、辺りを見回すと、剛士の他にも、10数人の人間の影が見受けられた。
「剛士?」
背後から、聞き慣れた女の声が聞こえた。振り向くと、見慣れたツインテール。咲夜だった。しかし、いつもと様子が違う。活発でいつも明るい彼女から考えられない程、絶望と不安に満ちた表情。
「剛士!!」
不意に、咲夜は剛士に飛びつく。その目元には、薄らと涙が滲んでいた。
「……咲夜?ここは一体……どうして俺達、こんな所に……」
「分かんない、分かんないんだよ!!……いきなりライガーのマスクを被った男に殴られて、気付いたらここにいて……」
「ライガー……」
脳裏にノイズが走る。ぼんやりと、ライガーのマスクを被った背の高い男の姿。
「俺達、拉致されたってことか……」
――「……ザザザッ」
その時、部屋の壁にジリジリとノイズが走った。そして、ぱっと薄く発光すると、何かを写し出した。
「はーい、みなさ~ん。こん~ばん~は~!元気してるかにゃ~??」
壁いっぱいに映し出されたのは、ふざけた格好をした猫耳の女。
女は耳に手を沿え、こちらに反応を求めているようだが、誰もそれに反応しようとしない。
「も~皆ノリが悪いんだ~!!ぷんぷん」
突っ込みどころが多いその女は、年甲斐もなく頬を膨らませ。両の手を握り、ブリブリと可愛い子アピールを続ける。しかし、それに反応できる肝の据わった人間など、この場にはいない。皆、不安な表情を貼り付けたまま、突如映し出されたその女を見据えていた。
「も~皆固いな~~~だから……死んじゃうんだよ」
女は唐突に、冷たい目をして言い放つ。
「嫌……嫌嫌嫌嫌嫌嫌っ!!!!帰りたい!!!!帰してよぉ!!!!」
部屋の隅に蹲っていた少女が、狂ったように泣き叫ぶ。しかし、そんな少女に、猫耳の女は冷ややかにこう返した。
「だったら勝てばいい……。それではこれより、『デッド・オブ・ファイターズ』を開催します!!」
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