第1章 戦いの幕開け

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 人付き合いは、元々好きな方では無かった。  そしてそれは、父と母の離婚でより一層、強固な物になった。  誰かと密接に関われば、必ず傷つけ合うことになると知っていたからだ。だから剛士は誰にも心を開かない。全てから目を逸らし、まるで機械のように日々を消費する。  しかし、そんな剛士にも、一人だけ心を開いてもいいと思える人間がいた。  ――木下咲夜(きのしたさくや)  その女は、何かにつけて俺の世話を焼いてきた。多分性格上、一人孤独な剛士を見ていられなかったのだろう。  二人が出会ったのは3年前、中学1年の時。いつものように、誰とも関わらず、一人屋上で昼飯を食べていた剛士に、咲夜が声をかけたのがきっかけだ。 「ねぇ君、格ゲーって知ってる?」  そしてそれが、全ての始まり。彼女に引きずられるがまま連れてこられたのは、駅周辺にあるゲームセンター。咲夜が剛士に勧めたのは、対戦格闘ゲーム――「鉄脚」。  操作すら分からない俺を、散々タコ殴りにし、すっきりした顔で見下すように俺を見る咲夜の顔を思い出すと、今でも殴りたい衝動を抑えきれない。本当に、忌々しい奴。  しかし、きっかけはともあれ、それが俺と格ゲーを引き合わせたという事実に変わりはない。  格ゲーは楽しかった。  ただボタンを押すだけで、人と繋がれた気になれるからだ。誰よりも人に臆病だった剛士にとって、それはとても大きなことだった。そして剛士は、次第に力をつけ、今では最強などと言われるまでに成長した。普通ここまでくると、満足し、段々と飽きていくのが人間という生き物である。それでも尚、剛士が格ゲーに固執するのは、偏に、咲夜の存在があったからに他ならない。  剛士はまだ一度も、咲夜に勝てたことがなかったのだ。 
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