第1章 戦いの幕開け

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 会場を出ると、見知った顔がこちらに手を振っていた。 「やーハロ、優勝者」  忌々しくもその女は、フランクに剛士の肩に手を回すと、「強くなったな~このこの~」などと言って、剛士を茶化した。  イラっとした。  そもそも剛士が不機嫌な原因も、この女のせい。そう、この女こそこの大会の準優勝者であり、剛士の最強のライバル――木下咲夜本人に他ならないからだ。 「てめぇ、今年もバックレやがって、今回はどういう了見だ」 「いやぁ、朝起きたらお腹痛くってさ~下痢っ下痢だったから休んじった~テヘペロ」  下痢っ下痢っなんて言葉を女子の口から聞かされるとは思わなかった為に、剛士はため息をつくしかなかった。  しかしこれもいつものことだ。剛士は「わかったよ」とぶっきらぼうに呟くと、咲夜に背を向けて歩き出した。 「ちょっと、どこいくのさ~まだ授賞式終わってないんじゃないの?」 「帰る」  そう言って、前を向いた時だ。いつからそこにいたのか、目の前に、鉄脚のキャラクター、「ライガー」のマスクを被った男が立っていた。刹那、男は図太い腕を振り上げる。そしてそのまま、剛士の顔面目掛けてその拳を振り下ろした。  剛士はその場に倒れ、混乱した頭で思考を巡らす。この男は何なのか、何故殴られたのか、そして何故、タイガーなのか。  答えは出なかった。  意識が段々と遠のいていく。  そして、ブツリと音を立て、まるでTVの電源を落としたかのように、剛士の視界は、真っ黒に塗りつぶされた。
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