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「いやちょっと待て、黒澤ちゃんに頼めばいけるかもしれないぞ。ちょっと電話してみるわ。」
社長はすぐに携帯電話をすすすっと操作し、電話をかけ始めた。
「大丈夫みたいだ。バイト君を向かわせるとさ。若いクロワッさんくんが来るぞ。」
「あーいましたね。わかりました。俺が受け取りますよ。」
そんなの最初からわかってるっての。忙しくしたのも、俺が口コミサイトいろんなやつに紹介して、感想書きまくってもらったんだから。断言する、やらせじゃないぞ。ちゃんとした意見を口コミしろって言ったまでだからな。
「お、今日クロワッサン食べれるんですか?早めに帰って来てラッキーだったな。」同期の岡本が嬉しそうに笑いながらOKサインを出す。岡本にも口コミやってもらってたんだっけな。
「あ、お昼の前に少し外いかないか。今時計台のところで催し物やってるだろ。あれ今日で最終日なんだ。まだクロワッさん来ないし、みんなで見に行こうぜ。」
「そうだな。じゃあ、社長。少し出てきます。ありがとうございます。」
今フロアーにいる同僚4人で少し浮かれ気味に下へ向かった。俺は別の意味で楽しみでしかたなかった。
俺が彼に再び会うのは、この10分後のことである。
「何かいい匂いしますね。」
岡本がエレベーターホールに漂う香りにいい反応を見せた。そう、この匂い。また会えたね。かわいいかわいいクロワッさん。
俺が彼に濡れ衣を着せるのは、この3分後の事である。
「ごめんなさい。コーヒーかかってないんで、大丈夫ですから。」
彼の目が涙目なのを見て、その涙が濡れているのを想像し、とても美しいと感じた。この顔をもっと汚してやりたい。
エレベーターが21階に到着し、俺は彼を今だけ解放することにした。
「ご利用ありがとうございます。またのご注文をお待ちしております。」
彼の体が少し震えているのを感じだが、俺は逃がすつもりはないと心に決めていた。
「また会えるよ、ここでね。」
エレベーターは完全に閉まったが、俺の声は彼にきっと届いていたことだろう。
さて、これからどう、彼のことを追い詰めてやろうか。
色っぽい意味でだから、それはご心配なくね。
こういう子に会えるの、俺は待ってたんだよ、ずっとな。
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