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一瞬、意味が分からなくて私はただ、目を瞬いた。
意味がわからない。
誰と誰が?
相田さんって、誰?
「え? 相田さんって?」
私は首を傾げながら、笑って聞き返した。
でも、心臓が、どくどくして、胸が痛い。
私が知ってる相田さんという苗字の人は、一人だけで。
「相田さんだよ、一時、春妃ちゃんに嫌がらせしてた、彼女」
吉川さんの言う「相田さん」と同じ人物のようだけど。
嘘だ、だって。
まだ然程親しくもないころ、矢野さんと亨と、相田先輩と私、4人で会うようになった頃からそんな素振りは、見えなかった。
寧ろ、プライベートで会うのはこれが初めてのような、距離感。
「え? 誰かと間違えてません?」
グラスを持つ手の指先が、冷たい。
どれだけ平静を保とうとしても、声が震えた。
「あー……ごめん。もしかして、知らなかった?」
そう言った吉川さんの眉が気遣わしげに、寄せられる。
けれど僅かに口角が上がった。
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