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いや、まずいこれは。
一緒に立ち上がらせようとする吉川さんに逆らわなければいけないのはわかってる。
だけど、ちらりと頭を掠める考えは、このままついていけば亨と相田さんのことを聞けるかもしれない。
それに気を取られて満足な抵抗も出来ずにいたら、吉川さんとは反対側の方の腕を掴まれて、はっとする。
「春妃! どうしたの、気分悪い?」
声の方へ振り向くと美佳が、私の腕を掴んで眉根を寄せ、吉川さんを睨んでいて。
私は、立ち上がりかけていた腰から力が抜けて、座敷の上に座り込んだ。
「あ、ああ。春妃ちゃん具合悪そうだから、ちょっと外の空気にね」
「じゃあ、あとは私が見ますから大丈夫ですよ。ありがとうございます」
私を挟んで反対側で吉川さんの舌打ちが聞こえたが、抱き寄せられていた肩から腕が離れた。
美佳はそれを無視して、私の顔を覗き込むと。
「……春妃? どうしたの、あんた」
まだ、泣いてはいないはずだけど。
美佳が、何かを察したのか顔色を変えた。
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