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さすがに周囲も、何かあったのかと気付き始めて、会話が止まり視線が集まってきたのを感じた。
「ごめーん、この子悪酔いしちゃったみたいだから、連れて帰るわ!」
美佳が咄嗟にそう言って、私の腕を取り荷物とコートを手早く私の手に持たせる。
その場を抜けるまで、美佳の友達が何人か声をかけてくれて私はなんとか作り笑いを浮かべて小さく手を振った。
「一体どうしたのよ」
店を出て少し歩いて、噴水のある公園のベンチに座ると美佳があったかい缶の紅茶を買って来てくれた。
私はそれを受け取りながら、吉川さんから聞かされたことをそのまま話す。
「亨と相田先輩、去年まで付き合ってたんだって」
ぷしゅ、とプルトップを引っ張り上げる。
冬の夜の空気は冷たい。ほどよく私の頭も冷やして、冷静さを取り戻させてくれた。
美佳が無言だったから、缶紅茶に落ちていた視線を上げると美佳は何か申し訳なさそうな表情をしていて。
「もしかして、知ってた?」
そう尋ねると、こくりと頷いた。
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