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彼が、私を心配してくれてるって、声だけでもそう感じたかったのかもしれない。
それを、美佳を通じて私だけが知れるという状況は、ずるい。
わかってても、今は会いたくなかった。
「明日、ちゃんと連絡すんのよ。向こうからかかってくると思うけど」
美佳が、迎えにくるという亨を説得して、私を自分のアパートに泊めることにしてくれた。
「明日は、同行支援行かないといけないし」
「春妃」
「……はい」
涙の引っ込んだ私は、ずっ、と鼻をひとすすりして立ち上がる。
缶の紅茶はまだなみなみと残ったままで、暖をとっただけで温くなってしまった。
「ばれたら面倒だし。良かったらほんとにうちに泊まる?」
「いいの?」
「いいわよ、散らかってても良かったら」
そのまま、美佳の家に初めてお邪魔して私はあまりの汚さに閉口し、泊めてもらう恩も忘れて、美佳に説教しながら夜通し片付けをした。
どうせ眠れなかっただろうから、それで良かったのかもしれない。
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