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昼食が出ると言っていたから、終わるのは多分13時を過ぎた頃だろう。
それまでの暇つぶしを考えなくてはいけない。
少し歩けばショッピングモールのある大きな駅があるし、そこまで行けばカフェで休憩するにしても買い物するにしても、便利だ。
コートのポケットに手を入れて、平坦な街路樹の並ぶ道を歩く。
天気は良いが、風が冷たい。
「あ」
ポケットの中で、振動がして、どきんと心臓が鳴った。
携帯の着信を知らせる振動で、その長さから通話着信だとわかる。
取り出して、液晶画面を見ればやっぱり、の名前が表示されていて。
私は往生際悪く、出ずにしばらくその文字を眺めてた。
だが、あんまり長く着信が続くので、いい加減覚悟を決めた。
昨日、美佳にもちゃんと話をするように、言われたのだし。
えい、と液晶画面に指を滑らせると、携帯を耳に当てた。
「もしもし?」
『おせぇ……』
そう言った亨の声は寝起きの様子で、それならかけてこなくていいのに、と憎まれ口を叩きたくなる。
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