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「今、歩いてたから。気付くのが遅れたの」
『なに、もう外にいんの。 また同行支援?』
『また』という言い方が、まるで非難されているみたいな気がしてカチンときた。
「そうだよ、それで明日は颯介くんの音訳に付き合う」
悪い?とでも聞くように、ぶっきら棒な口調で答えてしまう。
だけど電話の向こうでは別段気にした風もなく『ふうん』と小さな声がしただけだった。
亨の声を聞いて、案外ふつうに会話ができたことに少し安堵する。
昨日のような嫌悪感は、今は沸かずに済んだ。
相田先輩とのこと、聞いてしまおうか。
お互い無言で電話がつながったまま、思案していたら亨の方から昨日の話を振ってくる。
『……昨日。平気だった?』
「え……」
『二日酔い。なってねーの。飲みすぎて悪酔いしたって』
昨日と聞いて浮かんだのが吉川さんに聞かされた話で、思わず心臓が跳ねたけれど……亨はあの場にいなかったのだから、それを知ってるわけはない。
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