残像

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「平気、そんなに。昨日はごめん」 『いいけど、明日迎えに行く』 「……うん」 心配をかけていたのは事実で、そのおかげか少し声が柔らかくなったのが自分でもわかる。 だけど、明日会うのかと思えば……やはり気が重くなった。 会いたくないわけじゃない。 寧ろ、会いたい。 だけど、会って余計に不安になったらどうしよう。 私は上手く彼の話を聞けるだろうか。 『何、音訳以外にも用事でもあんの』 私の返事がどこか浮かない色をにじませていたのだろう。 彼にそう聞かれたけれど。 いっそ用でもあれば、会えない理由ができたのに。 頭の中は、ちぐはぐな感情が交錯して自分でももう、判断がつかない。 ただ、美佳に何度も言われた言葉が思い出され、それは確かに正論だ。 「ないよ。明日、私も話したいことあったから」 そう宣言しておけば、後で臆病な自分が出てきても逃げ出さずにすむだろう。
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