1878人が本棚に入れています
本棚に追加
『話って?』
「ん、明日会ってから。ちょっと聞きたいことあるだけ」
電話で聞く方が、きっと楽だ。
だけど、ちゃんと顔を見て話さなきゃいけない気がする。
私の言い方が、何か不穏なものを感じさせたのかもしれない。
亨が珍しく、甘ったるい声で言う。
『……会いたい』
その言葉に、たとえばいつもの私なら、急に何をって驚きながらも内心は喜べた。
けれど、今の私には何故か昨日の衝撃が思い出されて涙が出そうだった。
泣き出しそうで震える唇を一度きゅっと噛みしめてから、声だけは震えないように。そう意識しながら、声を出す。
「明日、会うじゃない」
『待てない。今日会いたい』
こんな甘い言葉も……後ろめたいことがあるからだろうか?
そんな邪推しか出てこない。
だけどそれが当たっているなら、ずるい人だなあと思う。
立ち止まって、真上を見上げると真冬の薄い青空を、ちらりと粉雪が舞った。
『どこに迎えに行けばいい? 春妃の都合のいい場所まで行く』
最初のコメントを投稿しよう!