残像

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久々の実家の自室は、大掃除の後もあってかほこりもなくキレイだった。 鏡台の前に座るとバッグを足元に、携帯を台の上に置いてため息をつく。 母の、ああいう偏見を含む考え方が好きじゃない。 私を心配してくれるのはわかるけれど、母が思う以上に颯介くんはいろんなことをこなせるし……第一、そんな風に恋愛に結び付けて欲しくない。 鏡に少し顔を近づけて、肌のチェックをした。 今日はもう、でかけるつもりもないし、簡単にメイクを落としてしまおう。 足元のバッグから化粧ポーチを取り出した。メイク落としのコットンを肌に滑らせると、耳元でグリーンの石が揺れる。 四葉のクローバーを模した石の並びが二つ。 左右それぞれの耳元で、チャリ、と小さな音をさせた。 指で触れると目の前の鏡に映る自分が、頬を緩ませる。 クリスマスは結局、亨の仕事が忙しくてデートらしいことはできなかったけれど、夜は一緒に過ごすことができた。
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