1618人が本棚に入れています
本棚に追加
私は身体の力が抜けて、テーブルで腕を組むとその中に顔を沈めた。
あんなに、あんなに悶々とさせられたのに。
「……なに、それぇ」
「こっちのセリフだよ、何お前。そんなことまで気にしてたのか。言えよ」
こればっかりは亨も予想外だったのか、呆れたような声で言われた。
ほんとだよ、聞かずに一人で悩んで馬鹿みたいだ。
「はー……他には?」
「他……ってか、ずるくない? よくよく考えれば……質問させて答えるなんて、私が質問しないことは話さないってことじゃん」
「お……いいとこに気付いたな」
私が聞くんじゃなく、亨の方から言って欲しい言葉だってある。
それに、そうやって笑い話で済まそうとするとこもずるい!
かといって……その方がきっと良い。
だっていくら追求したところで、私は亨から離れたくない。
だから、苦しいんだ。
せめてもの腹いせだ。
ぱっと勢いよく顔を上げると、涙とマスカラで汚れたおしぼりを亨に向かって投げつけた。
最初のコメントを投稿しよう!