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「そうだね」
「飲食店以外にも、結構店あるし。見て周る?」
言われて少し背を伸ばして、通りに立ち並ぶ店舗を先の方まで見てみると確かに、飲食店の他に本屋やブティック、セレクトショップもある。ずっと奥にはファミリーレストランの看板も見えた。
「ちょっと家から離れても、タクシー乗ったらいいし」
「ん、でもお腹すいたから先にご飯。あったかいのが食べたいな」
「鍋は?」
「それがいい!」
実は、お鍋が大好きだ。
毎日でもよいくらいだけど、一人鍋というのはさすがに寂しくて、家では諦めている。
私の即答に、亨が喉を鳴らして笑い、頷いた。
「じゃあいいとこ知ってる」
そう言って亨が連れていってくれた場所は、一件の小さな居酒屋だった。
新鮮な魚を魚市場で仕入れるから、仕入れ内容でメニューも価格も変わるらしい。
「亨、お酒飲むの?」
「うん、車ないし。お前も飲めば」
そう言われたけれど、躊躇った。
話を、しなければならないのに。
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