酷いのは、誰。

4/32

1617人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「そうだね」 「飲食店以外にも、結構店あるし。見て周る?」 言われて少し背を伸ばして、通りに立ち並ぶ店舗を先の方まで見てみると確かに、飲食店の他に本屋やブティック、セレクトショップもある。ずっと奥にはファミリーレストランの看板も見えた。 「ちょっと家から離れても、タクシー乗ったらいいし」 「ん、でもお腹すいたから先にご飯。あったかいのが食べたいな」 「鍋は?」 「それがいい!」 実は、お鍋が大好きだ。 毎日でもよいくらいだけど、一人鍋というのはさすがに寂しくて、家では諦めている。 私の即答に、亨が喉を鳴らして笑い、頷いた。 「じゃあいいとこ知ってる」 そう言って亨が連れていってくれた場所は、一件の小さな居酒屋だった。 新鮮な魚を魚市場で仕入れるから、仕入れ内容でメニューも価格も変わるらしい。 「亨、お酒飲むの?」 「うん、車ないし。お前も飲めば」 そう言われたけれど、躊躇った。 話を、しなければならないのに。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1617人が本棚に入れています
本棚に追加