酷いのは、誰。

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「うわ、手ベタベタになった。舐めて」 「……あのね。外でそういうの、もういいってば」 「あ、慣れてきやがった」 「はい」と手元にあったおしぼりを、亨に手渡した。 彼は何か不満そうにそれを受け取って手を拭くと、グレープフルーツサワーのグラスを差し出してくれる。 「ありがと」 「からかわれてるくらいが面白かったのに」 「いつまでも同じネタで狼狽えたりしないよーだ。はい、かんぱーい」 グラスを掲げてみせると、亨も猪口を手に取って少し掲げ、口を付けた。 私も口を付けて、二口ほど飲むと、グレープフルーツの苦さも混じる甘味が口の中に広がって、ふわりとアルコールが香る。 彼とお酒を飲むのは随分久しぶりだった。 付き合うようになってからは、初めてかもしれない。 4人で会っていた時はたいてい居酒屋かショットバーだったから、亨も車ではなく電車で会社に来て、飲んで帰れるようにしていた。 亨は、日本酒が案外好きで、ビールはあまり飲まなくて……。 ふ……と4人で会っていた時の空気を思い出して、また胸が、ずしりと重くなった。
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