酷いのは、誰。

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「え……吉川さん。昨日の飲み会で」 「……もしかしてそれで昨日、電話に出なかったのか」 「う……だって」 イラついたのか、深々とその眉間に皺が寄り、おまけに舌打ちまで聞こえた。 私はその音にすら、怖くて身を竦め……ふと、気が付いた。 ……ちょっと待って。 なんで、彼が怒ってて、私がそれに怯えないといけないんだろう。 これは、私が怒って良い筈の話で、ましてや怯える必要なんてない筈だ。 それに何やら、論点がずれそうな気がして、私は付け加えた。 「美佳も知ってたよ。亨と先輩、一緒に歩いてるとこ何度か見た人がいるって。ねぇ、なんで黙ってたの? 私たちに声かけて来た時もその後も二人そろって初対面みたいな態度まで見せて」 納得いかない。 その勢いで、言いきった。 彼は猪口をテーブルに置き、深々とため息をつくと、仕方なくといった様子で口を開く。 「あいつが言ったんだよ、黙っててくれって」 『あいつ』と、彼が言った。先輩のことを。 そんな些細なことに二人の親密さを見た気がして、ショックだった。
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