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「なんで?」
「……矢野さんに知られたくなかったんだろ。俺とのことは汚点みたいだし」
一年前くらいまで付き合ってたなら。
4人で会うようになる、半年くらい前だ。
「なんで言ってくれなかったの? 亨が私に好きだって言ってくれた時、私、先輩のこと好きだったんじゃないのって聞いたのに……昔の話だってことしか言わなかったじゃない」
「昔の話には違いないだろ。お前がここんとこずっと、不安に思ってたのは知ってるよ。俺ってそんなに信用できないか」
その時、「失礼しまー…す」とおずおずと女性の店員が暖簾を開けた。
言い争う声が聞こえたのだろう、料理の皿を手に戸惑って私たちを交互に見ている。
「あ、すみません。もらいます」
亨がそう言って、料理の皿を受け取った。
店員は、もう少ししたら魚鍋を運ばせてもらうので、と言い残してそそくさと部屋を出ていく。
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