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「ごめんね、急にこんなこと言って。悔しいけど……仕方ないって思ってたから、本当は告白する気なんかなかったんだ」
彼の、困ったような笑顔が印象的で、胸が苦しくなる。
今まで私が彼に放った言葉は、無神経なものばかりで……今は言葉もなく、ただ彼の話を聞いていることしかできなかった。
「だって、僕は目が見えなくて仕事も母さんの伝手でPC入力の仕事なんか貰えてるけど……そうやって誰かに頼るしかない部分はどうしても、あるから。でも……」
彼の手が、机の端を辿って私に近づく。
たどり着いた先にはテーブルの上で重ねていた私の手があって、彼の指先が僅かに触れた。
「不安にばかりさせられてる春妃ちゃんを見るくらいなら、もっと強く反対すれば良かった。僕の方が好きだって言えば良かった」
言葉の力強さとは裏腹に、彼の指先はまだどこか迷いがあって……たとえば強引に握られるのであれば、私はその手から逃げられたのかもしれない。
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