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その声はあまりにせつなく耳に響く。
私の感情がそう思わせたのか、彼の声のせいなのかわからない。
けれど、傷つけてしまったような罪悪感を感じて、視線を上げた。
「お前が知ったら」
―――亨でも、こんな顔をするんだ。
どこか遠い出来事のように、そう思う。
眉を寄せて、けれどそれは怒りのものではない。
泣き出しそうな、それ。
至近距離にあるその表情が近づいても、身動きできなかった。
「知ったら、絶対俺を好きになったりしないだろ」
声も出せないまま、触れ合いそうになって思わずびくんと肩が跳ねる。
だけど唇は空虚なままで、額と額がこつんと触れた。
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