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先輩の目が、少し心細げに揺れる。
弱い人なんだ、きっと。
今なら少し、そう余裕を持って先輩のことを見ることができる。
言葉もない彼女に、私はぺこりとお辞儀を一つして顔を上げた。
「あの日は、ありがとうございました。先輩が、亨とちゃんと話すように促してくれたおかげです」
話をしに行くつもりではあったけど。
先輩の一言がなければ、亨が六年も前の出来事など話さなかったと思う。
私が覚えてもいないことなど、話す必要がないと彼は思っていたのだろうけど、私は聞けて良かったと思うから。
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