前兆だとか、前触れだとか

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「惚けないで下さいよ」 深いため息が頭上で聞こえた。 二人のやりとりの意味がわからなくて、私は黙ったまま首を傾げる。 それが亨の腕に伝わったのか、私の頭を解放して見下ろしながら言った。 「お前、もう仕事戻れ」 ぴん、と額を弾かれて一歩後ろに下がる。 「え、やだ。話が見えないままだもん」 「後でちゃんと話すから。時間ヤバいだろ」 言われて、慌てて腕時計を確認する。 そうだ、休憩に出てからもう随分時間が経ってしまっていた。
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