1397人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかってるってば、仕事だもん。何も文句言ってないじゃない」
イラついた口調と言葉が飛び出して、これでは我儘と大差ない。
そう気が付いて、気まずさから黙り込む。
会いたいから、ずっと楽しみにしてたのに。
それに、安藤さんがやっぱり一緒にいるんだというもやもや。
いくつかの負の感情が私の言葉の邪魔をする。
素直じゃない私の言葉には亨も慣れっこなのか、電話の向こうで少し笑いを含んだ溜息の気配がした。
『悪い、もう行かないと。近いうちに帰るから』
そう言ってすぐに通話は切れてしまい、寂しい電子音を聞きながら今更後悔する。
なんでひとこと、ごめん、とか。
寂しいとか言えなかったんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!